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武州ゼミナールからの通信
by bushu-semi


武州通信158号(2008・5/6)

 ガソリン暫定税率(1ℓ当たり25.1円)が撤廃されて安くなったと思ったら、たったの一ヶ月で復活し、再度値上げ(5/1)。政治は何をするものぞ?!  
 チベット問題で国際的に批判を浴びている中国。北京オリンピックの聖火ランナーへの妨害多発、漸く中国国内へ。五輪は何をするものぞ?!

《村祭り、そして地域》の巻

 武州の郵便ポストに一枚のチラシが入っていた。手に取り、ふと目を注ぐと「4月29日(昭和の日)、大澤神社のお祭り」だと言う。大澤神社というのは、武州の卒業生、大澤治隆君(第8期生)が“神主”をしている神社である。おそらく治隆君自らが入れていったのだろう。

 4月29日、その日は思わず外へ出たくなる快晴だった。貫井囃子(ぬくいばやし)の笛や太鼓に誘われて、ついふらふらと。たった一日、その日限りのお祭りだし、治隆君からのお誘いもあったことだし…。大澤神社の境内は小さな子ども達と多くのお年寄りで予想を超えてごった返していた。次々に繰り広げられる出し物を横目に、まるで昔ながらの村祭りだなぁ!などとぼんやり考えていた。小さな神社だけれど奈良時代の藤原百川(ももかわ)に由来する、と、ずいぶん昔、治隆君から聞いたことがある。どうやら由緒ある神社らしいのだ。烏帽子を被った治隆君が神主の装束をまとい こちらへ近づいてくる。普段はバイクを乗り回す若者なのだが、この日ばかりはしっかり神主さんをしているところはさすが!! 今年は第14回目の「例大祭」だと言う。

 治隆君と話し込んでいると、前号の『武州通信』に書かせて頂いた坂口貞義先生が目に留まり、軽く挨拶するつもりが、「まぁまぁ、いける口でしょ。少しどうですか?」と地域のお歴々の席へ。不思議なものでこの席に座ると景色が一変する。まるで白うさぎを追って不思議の国に迷い込んだアリスになった気分?! 地域の顔役である坂口先生に次々とお酌に回る地元の方々。そのお相伴に預かりながら、軽い世間話をする。面白かったのは、僕の隣で話をしていた今年78歳になられるという かくしゃくとした方との“有縁”。 時間もずいぶん経ち、しこたま飲んで、そろそろ辺りの風景がくらくら揺れ始めた僕の耳に、「あなたの塾 はあちらのほうの? あの橋の近くの?」との言葉が隣から…。「えっ、確かにその方角ですが、なっ、なんでご存知で…?」「そこなら、うちの孫の達矢と萌がお世話になっている…」 達矢君は、ほんの半月ばかりだが大学受験の小論文を手伝ったことがあったし、萌ちゃん(中3)は、現在 武州に通っている。坂口先生が「福ちゃん、福ちゃん」と呼んでいたその方が、達ちゃん萌ちゃんのお爺さんだったとは? 「もしかして“鈴木さん”ですか?」などと今更ながら訳の分からない質問をしどろもどろで発している自分が、何ともマヌケでおかしかった。さぁーと周りの空気が僕の肌に優しく触れた。不思議の国が不思議でない国に変わったような気がした。別れ際に「うちの萌をよろしく」と会釈するお爺さんのかなたに、僕は可愛い笑顔の萌ちゃんを想い描いた。その時の萌ちゃんはぐるぐる回っていた。

 ちょっぴり千鳥足の帰り道、地域で生きるというのはこういうことなのだ、と考えていた。普段は気がつかないだけで、きっと見えない繋がりが蜘蛛の巣のように張りめぐらされていて、そこで僕は生かされているのだ、と。― ほろ酔い頭は活性化する。生徒みなの顔がぐるぐるぐるぐる。あれれっ!何だか楽しくなってきたぞ。生徒一人ひとりを大切に!だ。余りにも当たり前の言葉が色鮮やかに浮かんでくる。これが酒の効用なのだ。

 ところで僕は地域の何を知っているんだろう? 村祭りの「傍観者」である僕と「地域のお歴々の席」に紛れ込んだ僕。分裂した二人の自分がそこにいた。パラレル・ワールド、それがこの同じ小さな神社の境内にそれぞれ無関心に共存している、そんな気がした。これが「新住民の世界」と「旧住民の世界」なのか?とも思った。第14回目の「例大祭」、細りゆく地域だとは言うものの、決して混ざりきらない二つの世界を一瞬だけ近づけ、こうして連綿と引き継がれていくものなのかもしれない。

 ドンドンヒャララ、ドンヒャララ♪の“村祭り”。 ― 過ぎ去ったあとの大木ばかりが涼しげになびいている。今では、まるで祭りがあったことすら忘れたかのように、静かなしずかな鎮守の杜が ひっそりかんと佇んでいる。

(斉藤 悦雄)
by bushu-semi | 2008-05-14 10:32
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