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武州ゼミナールからの通信
by bushu-semi


武州通信151号(2007・9/14)

 一昨日、安倍総理大臣の突然の辞任。意外に弱かった粘り腰。社会保険庁問題から閣僚の不祥事・失言、参院選(7/29)の自民党の大敗、それに続く新閣僚の不祥事の発覚。国民を置き去りにして政治はどこへ?!

《若者から見た現在》の巻 

 無聊(ぶりょう)任せの『武州通信』なのですが、いろいろな意見が舞い込みます。読んで頂けるだけでも嬉しいこと、それに感想まで送ってくださる、本当にありがたいことです。返事を書かねば…、と思いつつ、ついつい時の過ぎるに任せてしまう無礼者です。すみません。ここで改めてお詫びを…。

 ところで第147号の「あぁフリーター・スパイラル」に対して長い長い感想メールが北原勇志君(27歳)から寄せられました(北原君は『武州通信』第145号で触れた「web書籍」を作成してくれた若者です)。あまりにも深く興味をそそる内容だったので、ついつい僕も長い長い“感想の感想”メールを! すると今度は“感想の感想の感想”メールが! こんな調子で数度の往復メールに発展。とても面白いメールのやり取りになりました。

 さて、こんなわけで、9月8日(土)の『オアシス武州』は、その北原勇志君に思いの丈(たけ)を語って頂くことにしたのです。テーマは「若者から見た現在」、副題は「フリーターの意識と生活」。北原君は現在インターネット販売の「古本屋」を営んでいますが、そこに至るまでに24業種のアルバイトを経験してきたつわものです。物凄いですね。お話を聴く前は、どうしてそんなに転職するの? もっと将来を考えて行動しないとダメじゃん!って思った方もいるかもしれませんね。そこです。そこなんです。北原君の怒りはまさにそうした外部、特に身勝手な大人の視線に向けられているのです。

 「フリーターは仕事に対して無責任で、すぐ辞めて、職を転々とする、もっと将来のことを考えろ!」というよくあるタイプのフリーター批判。その源について北原君は語ります。この手のフリーター批判は1980年代に隆盛を極めた消費主義的フリーターのイメージが現在まで尾を引いているからではないのか? つまり「どうにかなるさ」という“お気楽フリーター”イメージではないのか? これが、彼の推論です。でも、そんな“お気楽フリター”は現在ではほとんどいない。これが、彼の結論です。

 さて、彼が経験してきた、または見てきたフリーターの大半は、と言うと…。食い扶持を得るためにせっせとフリーターで稼ぎながら、少しは余裕のある生活がしたい、というささやかな(当然といえば当然の)願いを胸に抱いて日々暮らしているのです。それのどこに問題があるというのでしょう? それにも拘らず、どこも労働条件は悪く、厳しい労働のわりに安すぎる時給、正社員並みのノルマは当たり前、社会保障も受けられず、企業の都合で突然の解雇、それに正社員からの蔑視も…。もし生活が保障され、仕事に見合った対価が得られるのなら我慢して続けることもできるでしょう。それが得られないから、より良い職を求めて転々と職を替えるのです。しかし、どこもあまり代わり映えがしない。だから、大半のフリーターは「どうしたらいいか分からないのだ」と…。誰でも抱くあのつつましい願いを実現するために「どうしたらいいのか分からない」。人生の先が見えず、すごく不安なのに「どうしたらいいか分からない」。これが多くのフリーターの現状。― 彼は問います。「これでも“お気楽フリーター”“小遣い稼ぎのフリーター”“仕事をなめている無責任なフリーター”と言えるのだろうか?」 と。

 彼らの多くは正社員への道を模索していると言う。だが、企業で人事を手がける参加者の紺野正さんは「気持ちは分かるが、職を転々とする若者を雇う企業はほとんどないだろうね」と採用者サイドの意見を付け加える。これも貴重な意見に違いない。こうして「あぁフリーター・スパイラル」は完成する。

 まだ親の財力に多少余裕があり、親掛りの若者も多いから、それほど大きくこの問題は噴出していないけれど、親に依存できなくなる時代が遠からず必ずやって来る。すでに、少数ながら何とかしなければ…という動きから、「PAFF(フリーター全般労働組合)」や「POSSE(フリーターや学生が集まってつくったNPO)」なども現われている。

 今必要なのは、過去のイメージを重ねた「お気楽フリーター」などというフリーターの人格中傷ではなく、フリーターの現状に刮目して「フリーターの今後」を真面目に考えることではないのか? という北原君の怒りや深い思いが(このちっぽけな通信で)皆さんに少しは届いたであろうか? 

(斉藤 悦雄)
by bushu-semi | 2007-09-24 11:19
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