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武州ゼミナールからの通信
by bushu-semi


武州通信第178号(2010 ・ 3/25)

 昨日、今日と、小さな冬が舞い戻ったような寒さです。三寒四温? 咲きはじめた桜も身をふるわせ、“明日はどうかな?” と様子を窺っている、そんな気がする寒さです。

《『ベーシック・インカム』って何?》の巻

 失業か、低賃金か、はたまた過酷な労働か、これが現代の労働事情です。これはリーマンショックの結果ではありません。労働生産性の向上で、基本的には多数の労働者を必要としなくなった時代の結果です。それがリーマンショックで目に見えるようになっただけだと言えるでしょう。つまり、これからは景気の軽い波はありえても、労働市場の好転はあまり期待できそうにないのです。…となると若者の未来は? 社会構造の大転換がなければ、お先真っ暗ですね。  

 では、どうしたらいいのでしょう? 3月13日(土)の『オアシス武州』は、発想の大転換を模索する「ベーシック・インカム・実現を探る会」の代表であり、僕の若き友人である白崎一裕さんにお話していただきました。ベーシック・インカム? それって何? 最近では多少耳にするようになりましたが、まだまだあまり聞きなれない言葉です。
 
 『ベーシック・インカム(基礎所得保証)』とは、簡単に言うと「国家が国民一人ひとりに最低限度の生活費を支給する」というシステムです。もちろんこれに関しての詳細は議論の真っ最中であり、まだ統一見解に至っていないらしいのですが、ここでは白崎さんの考えの一端を纏めてみることにします。

 ベーシック・インカムの一般的定義は、①無条件(労働と所得を切り離し、労働者の意欲や能力とは無関係に支給される) ②個人単位(世帯単位ではなく、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人ひとりに支給される) ③資力調査なし(お金持ちであっても貧乏人であっても全員に等しく支給される)、ということです。おおよそ一人当り月8~15万円程度が妥当では?と、白崎さん。こう聞くと、みなさんの頭に様々な疑問が浮かんできますよね。基本的な所得が保証されれば、みんな働かなくなるんじゃないかな?とか、どうしてお金持ちにまで配るの?…とかね。それらの疑問に対しては14項目にわたって解答が準備されていますが、ここでは紙幅の関係上割愛します。

 とはいえ、財源問題にだけは触れないわけにはいきませんよね。国民全員に月8~15万円を支給すると聞くと、「えっ、財政破綻寸前の日本でそんなことできるの?」と思うのが多くの人の反応でしょう。確かに現在のままの日本では僕だってそう思います。白崎さんの発想の大転換はベーシック・インカムだけではなく、財源問題にまで及んでいるのです。いや、こちらの方が重要なのかもしれません。というのも、現在の財源は、周知のように、税金と膨大な借金(国債)によって賄われているわけですが、高度経済成長を期待できない今、税収は、大々増税でもしない限り、減ることはあっても増えることは考えられません。だから不足分は国債を発行することでこれまでも凌いできたのです。でも、2009年度末で国債発行残高581兆円、地方の借金も含めると804兆円(国民一人当り630万円)になっており、たとえ資産大国日本だとはいえ、後数年ほどで国債依存財政は破綻するとも言われています。低賃金の上、お粗末な社会保障、それも数年後には…? 白崎さんはこのような「税金+国債」財源論という発想自体を変えないとダメだと言います。

 では、どのように? … 彼は、税金・国債をやめて、国家が「公共通貨(政府紙幣)」を発行するシステムを作ることで財源確保はできると言うのです。「必要な量の紙幣」を日銀ではなく国家が発行する、確かに実現の可能性はありそうです(もっとも国家が無駄にじゃんじゃん発行すれば、ハイパーインフレの可能性も否定できませんが…)。もし「ベーシック・インカム」と「公共通貨」 この両輪がうまく噛み合えば、若者の未来はきっと明るくなることでしょう。
 
 さて、ここまで読んでこられた方は、それでも「本当かなぁ!」「うまく行くのかなぁ!」と首を傾げるかもしれませんね。実は僕もまだすっきりと納得できているわけではありません。ただ、考え方の根本を大転換しないと生活できない時代がこれからの時代であるのも事実なのです。白崎さんのユーモア溢れる、それでいて分かり易いお話は参加者のみなさんの心をつかんで離さなかったようです。遠い那須の地から足と希望を運んでくれた白崎さんに感謝しつつ、彼が帰られた後も、延々と議論が続いた『オアシス武州』でした。

 何はともあれ、「ベーシック・インカム」と「公共通貨」、この考えを肯定するにせよ否定するにせよ、誰もが一度はしっかり考えたほうが良い政策論だ、と僕は思っているのです。                 

(斉藤 悦雄)
by bushu-semi | 2010-03-25 11:35
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